聖戦士ダンバイン

Special Comment

Blu-ray BOX封入特典「バイストン・ウェル記録全集」に収録する
新規インタビューの中からコメントを一部紹介!

総監督 富野由悠季

『ダンバイン』も頑張ってたんだねえ

『ダンバイン』が10年とか20年経たないと認識されないっていうのも、当たり前だと思っている。それこそ今でも好きになってくれる人がいるとか、子供心に観た記憶が今になってはっきりと、ああいう存在っていうものもアニメだったらあるよねとか、ファンタジーだったらあるよねっていう風に理解してもらって、支持されるものになってきたんだろうなっていう意味では、改めて『ダンバイン』も頑張ってたんだねえって思うようになった。ガンダムに負けてるっていうのは何なんだろう。

キャラクター・デザイン 湖川友謙

ダンバインのキャラクターは、ある種の実験作だった

イデオンはリアリティ、ザブングルはギャグとかコメディ路線だった。だからダンバインは、ザブングルの先の先くらいの感覚で作ろうとしたキャラです。それはギャグもできて芝居的なリアルさも保てるようなキャラクターという意味だけど、ある種の実験ですよ。『機動戦士ガンダム』とかサンライズの他の作品が好きなファンや、それこそ他社のアニメ作品が好きなファンを全部ひっくるめて引っ張ってやろうという実験。ザブングルもイデオンもある意味で実験だったけど、ダンバインではそういう実験をしていた。

メカニカル・デザイン 宮武一貴

本当にやりたかったのは『ダンバイン』の世界

メカデザインというのは美術設定の範疇まで入ってしまうことがあるんです。『ダンバイン』では池田繁美さんが美術デザインをされていますが、ゼラーナの艦内も数枚書いていただいたんじゃないかな。その時点では僕はもう降板をしていたので、綿密なやり取りはないんです。池田さんや出渕さんに意図を汲んでもらって、引き継いでいただいた。でも、本当に続けたかったのは『ダンバイン』の世界なんです。僕にとっては一番やりたかった作品であり、本当に楽しかった。

メカニカルゲストデザイン 出渕 裕

デザイン画稿を見て凄いものが始まると思った

実は、企画が始まるときに、内緒でデザイン画稿を見せてもらっていたんですよ。こういうファンタジー世界を富野さんがやられて、スタジオぬえがその世界観を構築するっていうのは、凄いものが始まるなあと思いましたね。だから本当に、結果として僕にデザインの仕事が回ってくることになってありがたいと思っているんです。でも個人的には、その宮武さんの世界観をちゃんと最後まで見てみたかったっていう気持ちが、一ファンとしてはありますね。

美術 池田繁美

富野さん以降は背景の情報量が増えていった

当時は背景が空だと簡単なんですよ、青いだけですから。それが富野さん以降は「地平線があるはずだ」ということになり、地平線があるということは地面があるわけで、背景の情報量が増えていった。青い空に丸い雲だった背景が、グラデーションのある空に気象条件によって形の変わる雲が浮いているようになった。当時の現場からはブーイングの嵐でしたけど(笑)、今となってはそれが当たり前になっていますよね。

脚本 渡邉由自

オーラ力とは弱さのもたらす念波オーラだと理解していました

オーラ力とは結局、人間の欠陥である、強欲、利己主義、残忍さ、偽善、虚栄、そして何よりも弱さのもたらす念波(オーラ)だと理解していました。
外部からの来訪者(地上人)によって波紋を起こされ、それまでの拮抗が破れ、バイストン・ウェルの人々の中に眠っていた、あるいは存在することすら気付かなかった意識が、覚醒してしまった物語だったと思います。

脚本 富田祐弘

人の「欲」こそが多くの行動の動機となる。

悪党を作るときには、このキャラクターの「欲望」はどこにあるのかを考えます。人の「欲」こそが、すべての行動の原因となるわけです。それは人に好かれたいとか、嫌われたくないという気持ちすら「欲」であるわけです。そういう部分を考えることで、数多くいるキャラクターを分類したことはありますね。ただ、富野さんは人間の醜いところも意識して演出をされていたと思いますが、僕も当時は若かったから、それほど深くは考えてなかったように思います。

※抜粋するにあたって商品に掲載されている本文から一部表現を変更しております。

ショウ・ザマ役 中原 茂

ショウ・ザマが普通の青年で良かった

僕はショウ・ザマが普通の青年で良かったと思います。それを自分がやることができてというか、自分が彼を生きることができてというか。個性が際立つキャラクターはたくさんいるじゃないですか。例えば主役は普通だけど、周りに個性の際立ったキャラクターを登場させて、そういうキャラクターのほうが人気になったりとか。僕はキャリアを重ねるうちにいろんな役をやらせていただいた中で、やっぱり自分は、普通の言葉をその人間がちゃんとしゃべっていると思われる役ができる人間でありたいなと、ずっと思ってるんですね。それはショウのときからなんです。

バーン・バニングス役 速水 奨

僕自身、ここから始まったんじゃないかなという気がします

僕がアニメーションの声優をやるようになって、初期のいちばん僕の中での代表作と思っています。バーンを演じたことで、その流れというかな、主人公のライバルという役をいただけるようになった、いちばん最初の作品なので、僕自身、ここから始まったんじゃないかなという気がします。マックスとか『エルガイム』のギャブレーとは違って、バーンはいちばん正統な感じがしますよね。純粋にショウ・ザマに闘いを挑んで挑んで挑んで負け続けて屈辱を味わうという、その真っ直ぐさがなかなか。

マーベル・フローズン役 土井美加

マーベルは日本人の心と近いものを持っているということもあったんじゃないかなと思う

アメリカ人とはいえマーベルは座禅も組むような人で、日本人の心と近いものを持っているということもあったんじゃないかなと思うんです。だからきっと、マーベルも全くのヤンキー娘だったら「はっきり言ってよ!」みたいになったと思うんですけれど(笑)。でもね、全体を通してマーベルを見ていると、奥ゆかしいところのある人だなって思うし、必ず一回自分の中に収めてから言うみたいなところを持っていて、大人だなあ……と本当に感じていました。

チャム・ファウ役 川村万梨阿

チャム・ファウは人間が好きなんですよね

森に住んでいる子たちの中でも、チャム・ファウは人間が好きなんですよね。それで人間と行動を共にしているという点で他のフェラリオと違うというのは、物語が進むにつれてわかってきました。最初にショウと会ったときは、「敵対するドレイクに呼ばれた悪い地上の人」「近寄るな、敵だ」「バイストン・ウェルをかき回さないで」という想いだったと思うんです。だからマーベルと一緒に自分たちの陣営に来ても、やっぱり信じられませんよね、最初。だから疑っていたけれど、一緒に戦っていくうちに仲間として認識していくんです。

原画 北爪宏幸

画力があれば似せやすいキャラクター

当時の私は画力がなくて見よう見まねで描いているだけなんですが、今になってみるとむしろ画力があれば似せやすいキャラクターではないかと思うんです。元の立体を把握できていて、どの線を残してどの線を消去するかが把握できていれば、そこからキャラクターに落とし込んでいくのはそれほど難しくないのかなと。当時、湖川さんに飲みに連れていってもらったときにもそんな話になって、湖川デザインの系譜みたいなことを聞いたんですよ

原画・動画チェック 恩田尚之

多少アイデア的に使われるようなこともありました

クール系のキャラクターが好きで、まあ湖川さんのキャラクターは全部好きだったんですけど、おじさん系よりはマーベルとかそういうキャラクターが個人的には描きやすく感じましたかね。そういえば、ニーの髪型って僕が描いたアイデアが少し使われているんですよ。湖川さんが何かいい髪型ないかって言うから、こんなのどうですかって描いたら、お、それいいじゃんって(笑)。全部というわけじゃないですけど、多少アイデア的に使われるようなこともありましたね。

演出 鈴木 行

第1話の導入は、インパクトと疑問と、引き、それだけを考えたんじゃないかな

第1話は難しかったよ(笑)。どうやって作ればいいのか、まず分からなかった。悪い言い方で、アニメアニメした何でも画面で見せてしまう作り方は普通しないけれど、そのやり方を第1話でやったんで結構新鮮だった。異世界の世界観の説明から何から設定も山のようにあって、とてもじゃないけれど1話で何も説明できない。だから第1話の導入は、インパクトと疑問と、引き、それだけを考えたんじゃないかな。

演出 関田 修

大変なんだけれど他の方法を真似したくなかった

『ガンダム』の劇場版からも繋がっているんですけれど、ララァの周りが光るシーンがありますよね。あれをやり出して、『ダンバイン』では光が「ばーっ」と出るシーンです。大変なんだけれど他の方法を真似したくなかったんです。あれ、ララァのときもですが全部ピンで穴を開けているんですよ。動画用紙をコピーしてピンで全部穴を開けてと(笑)。それで透過光を使うと面白いんじゃないかなとやってみました。

音楽 坪能克裕

精神的な世界で、もしそういう精神だけで戦闘するんだったらどういうふうになるんだろう

戦闘はもっと内面的にあっていいんじゃないかという、自分自身の中の調整がみんなと同じじゃない。だけどクラシック的な要素を持ってきたら、結局そこはみんなと同じになる。そういう意味においていちばん気にしたのは、差異性をはかりながら、だけどみんなと同じという、そのバランスがとにかく大変でした。とくに『ダンバイン』の戦闘は精神的な世界で、もしそういう精神だけで戦闘するんだったらどういうふうになるんだろうと。

主題歌 MIO(現・MIQ)

1枚だけのつもりで歌いました

当時の私は横浜でソウルバンドのヴォーカルをやっていて、いわゆる昔でいうところのディスコで歌っていたんですよ。あとで伺ったんですけど、歌う人をあちこち探していたらしいんですね。それでキングレコードのプロデューサーさんが私の歌声を聴いて、即決だったみたいです。当時バンドで制作に入ってて……アニメについて何も知らないけれど、人生のうちで1枚でも「MIO」でレコードができたら親も喜ぶかなと思って、1枚だけのつもりで歌いました。

OVA版 キャラクターデザイン 幡池裕行

世界観が縦だからと言って、マルチに広がる余地がないということではない

バイストン・ウェルの世界は縦構造ではありますが、富野さんご自身も小説やOVAなりで色々なバイストン・ウェルの物語を描いている。出渕さんだって『AURA FANTASM』でオーラ・バトラーの新しいイメージを描かれている。だから、世界観が縦だからと言って、マルチに広がる余地がないということではないと思います。富野さんのすごいところは、こういう時代になることを予見していたように作品を生み出していることです。

OVA版 演出助手 原田奈奈

撮影は普通に動くよりも難しい部分が多かった

OVAは止め絵なのでスライドさせて撮影しないといけないんです。でも、当時の撮影はスライドがいちばん複雑で、「こっちとこっちは同時に引けない」とか、撮影台の限界などもあったので、それを理解して準備しておかないといけないため、撮影は普通に動くよりも難しい部分が多かったですね。撮影さんは撮影台にセルを固定して、カメラは固定して台を動かして撮影するんです。例えばクロス引きと言われていて交差しては引けないとか、ぶつかっちゃうと撮影できないとか、規制が多かったんです。

OVA版 背景 竹田悠介

セル画で描くものと背景で描くものとの質感を合わせて調和をとる

技術としてのハーモニー処理というのは、セル画で描くものと背景で描くものとの質感を合わせて調和をとるという意味があるんですが、セルと紙という素材の違いがあればともかく、デジタルペイントではRGBの数値の問題でしかないわけです。普通に背景画として描いても、セルの黒と色調を合わせることは数値上でできてしまう。例えば背景で描いた物の色をセルのほうでスポイトで拾うことで色は合わせられます、又、背景の側でセルっぽく描くこともできます。だから、今の若いお客さんにはとっては意識する必要もない技術なんですよ。

聖戦士ダンバイン Blu-ray BOX